葉月レター 2022

「糊と糊代」

祝町学童クラブ支援員のみなさま

「歌えなくなってやめるんじゃなくて、まだ歌えるうちに辞めたい」と加山雄三(85)は年内のコンサート活動をもって引退と表明されたことは賢明な決断と思います。余力の存在を描き込まれた彼の人生設計図に思いを馳せました。

NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人/三谷幸喜脚本」では権力の座<次のポスト>を巡って争いが起こることが演出されていますが、歴史を遡りますと家康は健在の内に秀忠に将軍職を譲ったことはこの歴史を学んでいたかと想像をしたものでした。

武家政権だけに限らずにトップが交代する時機を見定めてきた企業経営者の生き方に共感を持ったこともあります。その真逆で、権力者自身が頂点に立つことを目的化とし、あるいは権力者自身の実績作りのための事業や政策が優先され、組織内にいる生活者自体が二の次になってきた同族会社の歴史も垣間見てきました。

教会員の方々と会堂建築献金を長期間募り、古くなった教会堂と牧師館を数年かけて完成させて、その真新しくなった牧師館に一度も住むことなく、さっとご自身の進退を決断されて、教会員がごく少数の地に赴任された牧師を思い出します。

「先生の教会は新築され、そこで次の展開がなされるかと思っていました。ほとんど見向きもされなかった地方の教会へ行かれるとなぜ決断されたのでしょうか」「普通、不思議と思われることでしょう。牧師職は自分から牧師になるものではなく、呼び出しは神で祈りのなかで召し出されるものです。」「そうは言われても、給与も保障されない、いや寧ろこの誰も成し遂げられなかった教会堂建設の実績を掲げられて、皆さんは引き続き牧師職を担っていただくことを望まれているのではないでしょうか」「献げると言う意味を問うたことはありますか。自分の名誉実績のために牧師として呼ばれたのではありません。皆さんが喜ばれ、他者を思う生き方、豊かな生活が大事だと思います。宮沢賢治のあの詩ですよ」

私たちは何を軸にして生きるか、が問われています。引退時期、政権の維持、会堂建築のそれぞれには人が居て組織があります。組織体はメンバーによって成立しています。組織が活動を重ねる過程でメンバーの成長が図られます。そして時を読み込み、人は次の世代へとバトンを手渡して組織を継承していきます。

大事なことは人は変われど仰ぐ理想は変わるものではありません。理想を追い求めるその組織体はエネルギッシュで前進をしていると思います。理想つまり軸はミッションステートメント(MS)です。

7月に主任代行者を立てたことを先月報告いたしました。多くは代行者を立てるときはその組織が緊急の時が大半ですが、運営委員会はプロジェクトチーム会議(発展解消して事務局会議)の大切な議題の一つとして、軸をどのように継続していくかという「危機管理」を行ってきました。緩やかに、不安を抱かれないように、ましてや支援員間の乖離がおこらないように関係の方々からしっかりとしたヒアリングと課題の解決に向かって協議を重ねてきました。

人事は慎重の上に慎重をもって多面的にそして俯瞰して検討を重ねてきました。学童クラブの存在は子どもが中心であること、子どものための学童クラブであることを最優先してきました。

私たちは揺るがない理念(MS)の具現化が継承される“学童クラブのかたちづくり”を願っています。学童クラブにオーナーの存在はありません。運営委員会がオーナー感覚でマネジメントを始めますと亀裂が生まれます。幸いにも信子主任の職員会議での辞意表明後も変わらない学童活動がなされていることに敬意を抱きます。主客は子どもの存在そのもの、ここからすべて<見守り・支援・環境整備>が今日も始まっています。

主任と代行の9か月間の「のりしろ」を共に大事に活かされることを望んでいます。糊(のり)は皆さん9名です。 

                                                      2022年8月10日 

祝町学童クラブ運営委員長 内山賢次

祝町学童クラブ

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