「人生費」
祝町学童クラブ支援員のみなさま
「磯辺は生活と人生とが根本的に違うことがやっとわかってきた。そして自分には生活のために交わった他人は多かったが、人生のなかで本当にふれあった人間はたった二人、母親と妻しかいなかたことを認めざるをえなかった。」遠藤周作の遺作となった「深い河」の一節です。
私たちは解答を探して普通の生活をしています。その典型が学校ですが、学校の外でも同様に「解を求めて」暮らしているかもしれません。正解はないと言いつつも、なにがしかの解を求めて齢を重ねて生きています。そして解答のない(世)界の存在に気が付くこともあります。解答のある世界だけではない「面」の存在を知ったとき、それを人は「次元が違う」と見解を出します。
「生活と人生」が違うことが分かってくる季節は、小学生にとってはまだ先のことだと判断をして、青少年期は「生活指導」を優先してきた歴史があります。カウンセラー制度は整っても学校に「人生指導部」なる分掌が多くは存在していないことは周知のとおりです。人生指導が学校で必要か否かは別として、生活と人生が交錯している社会生活の只中では例外なく悩み悲しみ苦しみが生じてきます。
30年前の遠藤周作が磯辺に語らせていますように、現在においても私たちは「生活」を優先して生きているように思います。私たちは(人生)旅の軸足をどこに置き、どこに向かって歩いているのでしょうか、と自問自答しています。
祝町学童クラブは小さき歩みをじっくりと続けています。子どもは生まれた時から愛される存在です。がしかし、そのように願いつつも愛される体験があったのだろうかと首をかしげることがあったかもしれません。たとえその風が吹いて来たとしても、現場では一人一人の子どもたちに向き合って実践をされ、責任を転嫁させることはなく誠実に子どもの声を拾い続けておられます。
この出来事は「生活」支援員から「人生」支援員への軸(面)移動が起こった時だと確信いたします。
2022年度から賞与制度を設けました。小さな一歩ですが改善の足跡を刻むことができることに喜びを抱いています。先生方の学童にやって来る子どもへの熱情を形として表しました。
生活費の中の人生費か、人生費の中の生活費かその一葉となれば嬉しい次第です。
2022年7月28日
祝町学童クラブ運営委員長
内山賢次
尚2022年7月に採用いたしましたお二人の先生には2023年7月からこの制度を適用させていただきます。
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